司馬遼太郎にチャレンジ
今年の新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、
私が勤務する学校では、4~5月は8割方在宅勤務でした。
つわりと戦いながら自宅で授業動画を作成していたのですが、
まあ、普段より仕事は早く終わるので、自由な時間が結構ありました。
皆さんは「おうち時間」に何をしていましたか?
私はまず、GOT(ゲーム・オブ・スローンズ)をひたすら視聴しました。
海外ドラマ、結構好きなんですよね。
そして、これを機に読書をしようと、学校の図書館で本を借りてきました。
言わずと知れた名作ですが、読んだことがありませんでした。
私、文学部のくせに活字が苦手なんですよね…。
司馬遼太郎どころか、普段はほとんど本を読みません…。
(でも、漫画はめちゃくちゃ読みます。)
ただ、歴史を教える身として、司馬遼太郎くらい読んでおかないと!
と思い、チャレンジしてみた次第です。
これが、面白いのなんのって!
この人、どんだけ竜馬とその周辺の人物・歴史について調べたんですかね?
頭おかしいのかな?っていうくらいちゃんと史実に基づきながら、
竜馬の魅力や人間模様、幕末の歴史の躍動、志士たちの熱い思い
を見事に描いています。
武田鉄矢はじめ、
これを読んだ人がみんな坂本竜馬ファンになる理由がわかった気がします。
ただし…ただしですよ?
坂本竜馬と彼が生きた時代を語るためにはそれなりの文章量が必要なわけで、
とにかく長い!面白いけど長い!そしてちょっと難しい!(泣)
(電子辞書を片手に読みました。馬鹿でごめんなさい…。)
活字嫌いな私からすると、結構な労力を必要とする作品でした…。
故に、6月に学校が再開しても読み切らず、
産休期間に入ってようやく読破できそうという感じです。
ただ、本当に面白くて魅力的な小説です。
最後に、この本を通して私が感じたこと、考えたこと、を1つ。
「国民国家」という言葉を知っていますか?
これ、世界史の授業をしているとよく出てくるテーマなんですが、
「19世紀、フランス革命の影響を受けたヨーロッパ各国では、
的な内容の話なんですね。
教科書的な説明をすると、「国民国家」というのは
「一つの国民のもとに国家を統合し、国民主権を確立した国」
ということなんですが、
わけわかんなくないですか?(笑)
同じドイツ人なのに別々の国だったの?
神聖ローマ帝国ってドイツじゃなかったの?
ザクセンとバイエルンの違いは?みんなドイツ人なんじゃないんですか?
違う国だったんなら、統一とかする意味ある?
私は授業で話す度に、しっくりこないんだよな~と悩んでいました。
それが、『竜馬がゆく』を読む中で、しっくりきたのです!
例えば、
「あなたは何人ですか?」と聞かれたら何と答えますか?
「日本人です」って大体の人は答えますよね?
ところが、江戸時代にそうやって答える人はいませんでした。
「薩摩の○○」「長州の△△」って答えていました。
「日本人」というアイデンティティーはなくて、「薩摩人」「長州人」だったわけです。
日本は江戸時代、300余の藩に分かれていました。
藩っていうのは一般化して言えば諸侯のことですよね。
民族的には同じ日本人でありながら、人々は各藩(諸侯)に所属していて、
藩(諸侯)をコントロールして支配するのが江戸の徳川幕府でした。
(勝海舟や横井小楠などに影響を受けて形成された)竜馬の思想の根底には、
絶対的な存在であった徳川幕府を倒し、藩を取っ払って、人々をみな同じ「日本人」として統一し新しい国家つくる、という考えがあったようです。
そして、同じ「日本人」はみな平等で、国のトップは国民から選出し、合議制に基づく政治が行われるべきである考えていたようです。
(この思想が、いわゆる自由民権運動・大正デモクラシーにつながっていくわけですね。)
お、これが「国民国家」を形成するってことか!
と妙に府に落ちた次第です。
幕末の時代にここまでの考えを持っていたのはおそらく竜馬ぐらいだろう、
と司馬先生も述べていらっしゃいますが、
竜馬が生きた時代は19世紀。
まさに欧米各国が「国民国家」をつくっていた時代でした。
歴史って全部つながっているんですね~。なんと壮大な物語!
っていうか坂本竜馬ってすご過ぎ。
日本史には苦手意識があった私ですが、『竜馬がゆく』を読んで日本史の魅力に気づきました。
そして、世界の歴史日本の歴史のつながりを感じ、
思いがけず授業へのヒントを得ることができました。
読書って、大事ですね。
頑張って本読みます。